「ただ移住者が増えればいいということではない」

(健一)
トラブルもありましたよ。色々と。
(純子)
色んなことがあったよね。

(矢野)
そうですよね。トラブルと言いますか、移住者が来てどんなことがありましたか?
(健一)
当初はヨソモノが来ると厄介だねという声が多かったと思う。今はどんどん人が減っている中で、子どもたちや若手が地区にパラパラといるようになって、「あーーーよかったな」って言葉には出さなくてもそう思ってくれている方がたくさんいるんじゃないかと感じています。それでもやっぱり偏見の目で拒絶される方は今でもいます。事実としてね。いつまで経っても…。
実際、移住者によるトラブルもある中で、例えば地区の清掃活動など住民の責務となっているものを果たさない人もいたり、いい移住者だけじゃないですからね。移住者にも地元住民にもそれぞれの考え方がありますからね。どっちが正しい、正しくないではなく、地元の習慣やどこまで許容できるのか、人同士の相性もありますもん。
(純子)
紹介した中でずっと定住される方は半分以下、1/3くらいかもしれません。数年住んで出ていかれる方もいらっしゃいます。
(健一)
地元が嫌う場合もあるし、移住者本人たちが嫌う場合もあります。
(矢野)
それがリアルというか、ホントのところですよね。
人が増えないと維持できないとか、人が減ると困ることってなんですか? 移住者が増えるといいなと思う理由は地元側から見ると何なんでしょう?
(健一)
自分は根本的に人が増えるといい、ではないと考えているんですよ。憶測ですが、みんなが思っているのは幸せに暮らしたい、協力しあって暮らしたいということだと思うんですよね、根本は。それが実現されるのではあれば、人が多くても少なくても構わないんですよ。ただ、生活する負荷が少なくなって幸せに暮らせればもっといいなと考えている。少数精鋭でも協力しあって暮らせるならば、それで構わないんです。誰でも来てくれ!ではなくて、極端な話、合う人だけが来てくれればいいんです。地区住民としての責務(地区の清掃活動や行事ごと)を果たせない人は来なくていいんです。自分はそう考えています。自発的にやってやろうという人は、他の人の三倍くらい働いたりもするんです。『さぁこの地区のために自分がやってやろうやないか。』って、そんな人がいいんです。そんなことやりたく無い人は極端な話、来なくていいんです。この山での暮らしには合わないですから。
(矢野)
移住を検討しているときに不動産屋さんから誰でもいいから玄関のピンポンを押してでも地元の方に”移住者と地区住民との関係性”を聞いたほうがいいよ、とアドバイスを受けて、、、。例えば糸島の方は移住者が増えて、地区の昔からのしきたりを守らない人が増えてきているようで。区費さえ払えばそれ以外はやりたくないという人が増えて、軋轢が生じているという話をされていたんです。移住者の方が地元住民より増えてしまってパワーバランスが崩れたというか、地元の人の声が通らなくなったみたいで。でも、移住するならばその地域でやらなければいけないことをちゃんと把握してちゃんとやることが必要だと思うんです。でも、お金を払えばそれでいいっていう人がもしこの地区に増えていってしまったら住民の数は増えるかもしれないですけど、それでこの地区が成り立つかっていうと、、、。
(健一)
端的に言うと、お金を払うと誰か草を刈ってくれるのかという話ですよね。都会に住んでいるとお金を払えば誰かがやってくれるという意識になってしまっていて。山に住んでいると草刈りをした上に、区費まで払わないといけないというね(笑)

(矢野)
そもそもどうやって地区が維持されているのかを理解する必要があるんでしょうね。ここに住んでいると例えば近所のおばちゃんから雨が降りそうな時に洗濯物が干しっぱなしだと『洗濯物とり込みなさい』とか言われるんですよ。でも、うちの母とかは街の人なんで監視されているような気持ちになるみたいなんですけど、私的にはむしろ『ありがとうございます』なんですよね。でも、人と関わりたくない、都会に住んでいて隣の人を知らないようなそういう意識の人が山の環境とか空気がキレイとか、そういう気持ちだけで移り住んできても幸せにならないかなと思うんですよ。
(純子)
移住希望者の方に住まいを紹介しはじめた頃は、事細かに最初に消防団のこととか地区住民としての役割とかをいっぱい説明して、その役割を果たしてくれない人は紹介したくないとはっきり伝えてたよね。引っ越してきた後も、次は何があるよ、その次はまた何があるよ、って言ってたんですよ。
(健一)
今は移住サポートをする団体の方が表に立ってくれて、自分は家探しのところでお手伝いすることが多くなってきたのでね。中々そこまで話すことも無くなってきたんですけどね。
(矢野)
合う合わないもありますし、地区で大切にしてきたしきたりとか周辺に住んでいる方との関係の中で暮らしているということを理解してもらって移住してもらうということがお互いの幸せに繋がりそうですよね。
今日は貴重なお話をありがとうございました。ホンネの話は移住を考える人にとってすごく参考になるんじゃないかと思います。
【まとめ】
木下御夫妻とお話していて、一番大事なことは移住者も地元住民もどちらも幸せになる関係性なのだとおっしゃっていました。その通りだなと思います。
子供がいたから感じることかもしれませんが、富士町に来て子供たちはたくさんのおじいちゃんおばあちゃんに可愛がられ地域の子供たちとも兄弟のような関係性で、出会ったら誰にでも挨拶をし声かけしてもらい、近所のおばちゃんからお菓子や野菜ををもらって帰ってきたり、私たちも近所のおばちゃんからお野菜をいただいたり、梅や栗を獲らせてもらったり、何かあれば外から「矢野さ〜ん!」と誰かが何かを持って来てくれる。こういう関係性は今の世の中なくなってきていると思います。
また、カフェを始めて地元の方々も来てくださるようになって、地元の方も私たち移住者もお互いに話すことのなかった方と話す場ができ、豊かな関係性が生まれています。
こういう関係性を尊いものだと感じてくださる方に来ていただきたいと思っています。
ただ、自然豊かだからとか、畑で野菜の収穫してみたい。そこから入るのも一つだとは思いますが、この関係性を尊いと思った上でないとここでは暮らしていけないと思います。
もし富士町に興味を持たれた方がいらっしゃったら、是非カフェにお立ち寄りください。また新たな関係性が生まれるかもしれません。
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